変わりつつある学校英語教育

グローバル化の波により、小学校から英語の授業を行う学校が増えてきています。そのような環境のもと、世間一般の共通認識は、「今後は会話重視の英語教育になっていく」というものかと思います。ところが、文部科学省が発表している「今後の英語教育の改善・充実方策について 報告~グローバル化に対応した英語教育改革の五つの提言~」の中で、気になる記述を発見しました。

「低学年から外国語活動に取り組む小学校約3,000校(全体の約15%)における取組状況を見ると、小学校高学年で学習意欲が低下する傾向が見られる例もある。その場合、高学年で「読むこと」「書くこと」も含めて系統的に指導する教科型の外国語教育を導入することで、児童の外国語の表現力・理解力が深まり、学習意欲の向上が認められている。」

つまり、会話ばかりの「音」に頼っただけの教育では学習意欲が低下するケースがあると言うのです。抽象的な思考力が高まる段階に入った子供には、それだけでは物足りない場合があるということです。

例えば、今からアラビア語を学習しようとします。もちろん、アラビア語に関する知識はゼロという前提です。そのような状態でも、何度も簡単な会話フレーズを聞いていれば、それらを「記憶」して話すことができるようになるでしょう。ですが、系統的学習ができていない、特に文法の知識がない状態では、いつまでも自分の言葉をアラビア語で表現できません。すると、どこかのタイミングで学習がつまらなくなる。恐らくはこういう現象が、小学校高学年でも起きているのでしょう。

この事実は、今まで言われていた「学校英語のような詰め込み学習ではダメだ!もっと会話重視すべきだ!」という論調から考えると、まるで先祖返りのような話に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。要は、会話ばかりでもダメで、(学年に応じた適切なものを)バランスよく学ばないと、結局学習者本人(=子供)のモチベーションは維持できないということなのです。

考えてみれば、これは至極真っ当な結論ではないでしょうか?というのも、世間一般に言われるバイリンガルは幼少より英語による「会話」の中で育ち、英語を流暢に話しますが、同じメソッドを日本語環境で育った小学生に当てはめることはできないからです。特に、学校の授業でしか英語に触れない子供に「会話重視」の教育を施したからといって、英語が流暢にならないのは理解できます。

ここから学べること、それは幼少期にただ単に英語環境を用意してあればそれでOKというわけではないということです。その子の成長段階に合わせた適切な学習を施してあげることが重要なのです。つまり、なんでもかんでも「会話」を教えればいいということではありません。徐々に改良されていく学校教育に期待しつつ、保護者側としては、「今子供が必要としているものは何か」を考えて、適格にガイドしてあげることが大切なのです。