留学は日本企業の就職に有利か?

英語などの他言語を身につける一番の方法は、やはり留学でしょう。24時間他言語しか話されない環境に身を置くに留まらず、その国の生活や文化思想を学ぶことで、よりいっそうその言語を深く理解できるからです。ただし、留学にはかなりお金がかかるということもあって、最近では短期留学が流行しているというのは、以前の記事でも取り上げました。今回は留学と就職の関係を見ていきたいと思います。短期留学は果たして就職に有利に働くのでしょうか?また、長期で留学すると、日本で就職が有利になるという傾向はあるのでしょうか?これに関し、よくあるパターンごとに紹介しています。

▼海外の大学に4年間通い卒業した場合▼
このケースが一番就職に有利に働きます。企業側としても、4年間も海外にいた上に、卒業までしているのだから、相当語学が堪能であるであろうことが期待できます(もちろん、その期待を満たすだけの実力を身につけているという前提です)。ただし、このケースでも不利に働く要素はあります。1つは、かなり有名な大学以外は日本での知名度がないので、単に「英語ができる人」と判断されてしまう可能性があること。もう1つは、海外に長く暮らしていたので、日本的な考え方や思想に馴染めるのかを心配されてしまう可能性があることです。面接の際は、日本企業文化で働いていけることを十分アピールすることが重要となってきます。

▼1年未満の語学留学をした場合▼
このケースはやや不利になるかもしれません。この短期留学は通常、学歴としては認められず、いわゆる塾のような扱いになってしまいます。よって、あくまでも日本で所属している大学や学校だけを見られることになります。また、1年留学したということで、企業側からすれば、他言語を流暢に扱うことを期待しますが、実際1年の留学だけでは、その言語に流暢になる人は稀です。結果、面接では企業の期待値を下回り失望されるというパターンがなくもないのです(ただし、これは個々人の努力量や、その企業がどのような基準をもっているかにもよります)。このケースで就職に有利に働かせるためには、まじめに勉強をしてしっかりと語学を身につけるしかありません。

▼会社を辞め、1、2年間語学留学やワーキングホリデーをした場合▼
実はこれが一番不利になるパターンです。社会人になってからの留学は計画を持って慎重に判断する必要がありそうです。

まず、会社を辞めた後の期間は「離職期間」と見なされます。この期間は通常6カ月を超えると再就職が不利になりますが、留学していてもそのことに変わりはありません。この不利を埋めるだけの何かを身につけて帰ってくるのであればまだいいのですが、現実にはそうなる人は多くありません。行き詰って仕事を辞め、海外の開放された空気の中で骨抜きになってしまう日本人が少なくないからです。そういった現実を踏まえ、「仕事を辞めて海外に遊びに行ってたんだ」ととらえる人事部が多いようです。

語学留学でなくワーキングホリデーであってもこの事実には変わりはありません。学生としてではなく、仕事経験を積んだと思われたいところですが、ワーキングホリデーで就ける比較的簡単な職種と、帰国後日本で就きたい職種には通常大きな隔たりがあり、ワーキングホリデーの経験は「アルバイト経験」としか見なされないことが多いからです。

▼MBA留学をした場合▼
では、社会人になってからの留学が有利になるパターンはあるのでしょうか?本気で自分の進路を変えていきたいのであれば、有名大学でMBAを取るというのがひとつの選択肢です。MBAを持っているということは、それだけ専門的な知識を有しているという証明であり、職業経験値と同等かそれ以上に高く評価されます。少なくとも、その留学期間中を「遊んでいた」と見なす人はいないでしょう。同時に、MBAを取得するだけの英語力も証明できますので、就職にかなり有利に働くと言っていいでしょう。
ただし、ここにも注意点があります。一つはMBAをどこで取るかが重要になってくることです。有名大学のMBAでないとほとんど評価されないケースも多くあります。次に、そもそもMBA取得者を評価している企業・職種が限定されるということです。帰国後の就職志望先をきちんと調べた上で、留学を決定しましょう。

このように、留学もその方法やタイミングによっては不利にも有利にもなります。共通して言えることは、それが長期であれ短期であれ、海外に行ったからには、流暢レベルになって帰ってこないと就職面では厳しい結果になる、ということです。それでも、海外で生活することによってしか感じ取ることのできない異国の文化やそこに住む人の価値観を肌で理解することは、言語習得よりもダイナミックにその人の思想や人生をリッチにしてくれることは間違いありません。人生を一変させてしまう可能性もあることですので、自分のキャリアプランをしっかりと考えた上でチャレンジしてみてください。